2年続く仙腸関節、腰、臀部の痛み

2年続く仙腸関節、腰、臀部の痛み R8.1.23 50代女性

 

2年前、長時間歩行後に突然、仙腸関節・股関節・腰・臀部・大腿・背部にかけて広範囲の痛みが出現。数日間は痛みが強く、歩行困難な状態となった。医療機関にて「仙腸関節炎」と診断され、フォリアミン、トラムセット、セレコキシブ、メトトレキサートなどの薬物療法、リハビリ、鎮痛注射を受けたが改善せず。

その後、整骨院・整体・マッサージなどを巡る中で、家族が経営する「足のセラピー達磨屋」にも通院していた。症状が長期化していることから、同院より鍼施術の選択肢として当院を紹介され来院。


2.既往歴・検査所見

リウマチの既往あり。
病院での画像検査では

  • 膝軟骨に軽度摩耗
  • 仙腸関節・股関節に明らかな骨変形なし
    と説明を受けている。

3.初診時所見

痛みは背部・腰部・臀部・大腿・下肢前後面と広範囲に及ぶ。

東洋医学的所見

  • 脈状:洪・実・嗇
  • 腹診:中注に著明な圧痛、季肋部・大巨・臍下にも圧痛
  • 反応点:然谷、天牖、肩井 ほか

症状の広がりと通院歴から、まずは東洋医学的診断を軸に施術を行う方針とした。


4.施術経過

【第1回施術】

目的:瘀血・炎症反応の調整、全身過敏状態の鎮静

  • 中封・照海・陰陵泉・尺沢・天牖:置鍼
  • 骨盤周囲の過敏反応に対しF5刺絡
  • 伏臥位にて脊柱・頸肩部の単刺
  • 5-1K、上髎・次髎に地熱灸

施術後、「何か良い気がする」との反応あり。継続通院を提案。


【第2回施術】(1週間後)

全身はやや楽になったが、腰仙骨部・大腿部の痛みは不変
脈状はやや落ち着く。

前回と同様の施術を、やや太めの鍼で実施。
施術後、来院前より軽減するも

  • 靴下着脱時の股関節屈曲痛
  • 腰伸展時の腰仙骨部痛
    は残存。

【第3回施術】(10日後)

全体的には緩やかに改善傾向だが、股関節・腰仙骨部痛が停滞
同一アプローチでは限界があると判断し、方針転換。

  • 股関節動作痛に対しF5刺絡
  • 仙腸関節伸展痛に対しF6刺絡
  • 腰・臀部・大腿に電気鍼(パルス)

施術後、動作時痛の鋭さは軽減するも、特に伸展時痛は残存。


【第4回施術】(6日後)

患者より
「鍼の痛みは一瞬ですが、腰仙骨はずっと痛いので、刺激が強くても我慢します。治してください」
との訴えあり。

施術中の会話から、過去に足関節内反捻挫を複数回繰り返していたことが判明。

内反捻挫により

  • 腓骨が下方へ偏位
  • 大腿二頭筋外側が持続的に牽引
    深部筋の慢性緊張と血流障害を引き起こしていた可能性を考慮。

伏臥位にて大腿深部を強圧すると、異常な筋緊張と血流停滞を確認。腰・臀部深層筋にも同様の所見あり。


5.原因の推察

  1. 大腿二頭筋から腰仙骨部にかけての持続的筋緊張
  2. 深部筋内への瘀血の蓄積
  3. 身体の恒常性破綻による炎症反応
  4. 炎症腫脹血流障害の悪循環による慢性化

初期の瘀血処置・扁桃処置は症状には合致していたが、根本原因ではなかったと考えられた。


6.新たに行った施術(未経験のアプローチ)

  1. 側臥位にて腰屈曲・上側下肢伸展位をとり、大腿二頭筋を最大限伸張
  2. 緊張を保ったまま、最大緊張部へ太めの寸65番鍼で深鍼雀啄
  3. 曲げ伸ばし後、再度伸張位で深鍼雀啄を反復
  4. 同様の手技を殿筋深層にも応用

整骨院勤務時代のスポーツ鍼を、深部血流改善目的に応用した手技。


7.結果

施術後、

  • 仙腸関節の可動性が大きく改善
  • 最も強かった腰伸展時痛が消失

股関節周囲の痛みが一部残存しているため、現在も継続施術中。


8.考察

 

本症例は、局所炎症ではなく遠位の外傷既往に起因する深部筋の慢性緊張と瘀血が主因であったと考えられる。
深層筋・血流・動作連鎖に着目したアプローチにより、長期化した仙腸関節痛に変化をもたらすことができた。

 

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